今回は大手計測機器K社で厳しいプロセス管理を会得した営業管理者様から、匿名でお話を伺いました。
大手計測機器K社は誰でも成果を出す営業のプロセス管理が根付いており、出身者は科学的な営業管理を実践することで有名です。
今回は、注目されることも多いK社の営業プロセス管理についてインタビューをお届けします。
候補者様 自己紹介
──どのような営業活動をされていたのか、教えていただけますでしょうか。
大手計測機器K社に30年以上勤務していまして、本社のマーケティングなどを担当する販売促進部や営業所長などを担当してきました。
直販のメーカーで、主にクライアントは製造業や物流センターなどです。
一方で、家具小売さんや食品小売などで使用される、在庫管理効率化のためのハンディターミナルの販売にも携わっていました。ハンディターミナルは、バーコードリーダーや2次元QRコードを読み取ると在庫の状況を確認できるシステムです。
大手計測機器K社の営業PDCA
──法人営業をされている営業マンの方はどのような仕事をされるのでしょうか。
1週間の間、2日は社内でインサイドセールスをしていました。残りの2~3日は外出して訪問します。
営業の流れはまず、リードをとるところからスタートします。HPからの資料ダウンロードや価格の問い合わせをいただいたときの情報をもとに、コンタクトをとってアポ取りをします。
訪問件数は1日あたりおおよそ5件ほどになります。訪問前には訪問先案件について報告書を提出します。報告書の記載事項としては訪問時間や検討機種などがあります。
──わかりました。週2日はインサイドセールスでアポイントを取得し、その後、報告書にまとめた後に実際に訪問して営業活動を行なう、という流れですね。
はい。上司はその報告書の内容を見て、この内容ならこんなツールが役立つとか、この内容なら念のため見積もりを作っておいたほうがいい、など新規ならPRの方法を考えますし、クロージングならどんな形でまとめるように考えているのか、内容に応じてアドバイスをします。
帰ってきたら結果を聞いた上で、次回の対策を考えます。
こんなPDCAを回す感じです。
──つまりメンバーのフォローを、訪問前と訪問後で上司がしっかり見ている、ということですね。かなり手厚いですね。
そうですね、上司が承認をして初めて外出ができ、事後の報告を受けて完了する流れです。
商談化は50%の受注コミット
──商談管理の具体的内容を伺いたいのですが、どのような商談の管理をされていましたか
お客様が予算を申請した、こちらから見積もりを提出したとか、話題の中にそんなアクションがあった場合に、営業マン個人の判断で半年以内に獲得の見込み50%以上とされるものを商談にあげます。
月の目標は、ひと月の間に見込みある話題を10件、商談を5件、獲得を3件という具合です。流れとしてはこんな感じですね。
──話題の次は商談、そして受注ということであれば、商談の中身の良し悪しまでは管理されていなかったのでしょうか
そうですね、良し悪しは推移を確認していく中で、話題や商談は自己申告になりますので、内容の見極めは営業マンの主観に委ねられます。いくら話題や商談が多くとも、獲得できなければ意味がありませんので、話題や商談の見極めが甘いと判断出来た場合は、上司が介入することもあります。
内容の強化は、電話でのやりとりをモニタリングしてその都度フォローするなど、細かいサポートです。話題や商談が少ない割に成約が多い場合は、話題、商談にできる案件は報告よりも多いということになりますので、もっと話題や商談を上げるように指導します。
精査することで、上司が話題が何件でているか見えるようになりますので、今まで申告されていなかったものまで介入する余地ができるようになります。
このようにして、話題、商談、成約の3つで管理をしています
──話題や商談の時点で金額は入力するのでしょうか。
話題の段階でヒアリングできたものは出します。台数や売上などですね。見積もりを出すので、その時に大体の数字はわかります。
──商談の中でA~Cなどの基準を設定せずに、受注するつもりで全ての案件をあつかうイメージでしょうか。
商談の設定は半年以内に売れる確率が50%という内容です。そこを複雑にすることはしていませんでした。商談にあがれば全力で獲得に向かう、というイメージです。
──見込みが薄い場合は商談にはしない、ということですね。
見込みが薄い場合は、話題というカテゴリーで管理していました。話題が多ければ多いほど営業のリターンが上がっている、ということですから、話題の根拠となるもの、例えば展示会の内容や、有効な施策など、分析も合わせておこなっていました。
──これが聞けたら商談にするなど、明確な基準はありますか
いえ、あくまでも営業マンが半年以内に売れる確率50%以上と判断したものになります。台数や売上、購入ルートが決まっているなど、良い情報があれば商談と判断するきっかけにはなりますが、最終的には営業個人の判断で決まります。
──提案の内容やどういうルートで購入して導入するか、まで決まって入ればあとは営業の主観で商談にあげるか判断するということでしょうか。
そうですね、台数、金額、購入ルートですね。あとは時期でしょうか。客観的事実はその程度です。
──営業さんの見極める力が要求されるということですね。
全然売れないとなると、見極めが甘いことになりますし、そもそも商談が出ていない場合はもっと営業力を強化しないといけない、という風に考えます。
あとは、営業マンそれぞれのクセですね。訪問が好きな人もいれば、室内が好きな人もいますし、そんな属人性をなくしていくことがキーエンスでは求められました。
あの人だからできるのではなく、誰でも一定のレベルの営業ができる形が理想です。
営業マンの鍛え方
──話題や商談が出せない営業マンに足して、管理者としてはどのように指導されるのでしょうか
指数の確認と質と量の確保です。質と量は両方上げていくことが大事ですが、量はあるけど質が伴っていない場合は、話題や商談の見極めについて上司が介入します。
例えば決済者の再確認や、競合との差別化ができていない場合は、なにか強みになるものを再提案するなど、そんなアドバイスをします。
量が足りない場合は、コンタクト数や訪問回数を増やすための、さまざまな切り口を提案します。
新人へのプロセス評価徹底
──難易度の高い管理方法だと思いますが、新卒で入社された人はどのような過程でこの運用方法に慣れていくのでしょうか
一つは指数管理です。SFAで顧客管理をするのと同時に、訪問件数や話題、商談獲得、電話件数、通話時間などそれぞれに対して目標をたてます。
目標にたいして、指数を確認しつつ 入社5年目までは、売上よりも売上に至る過程も見るようにしています。売上よりも売上に至る過程がしっかりしている人のほうが、将来的に安定した売上が出せるようになる可能性が高いです。
売上は偶然のようなイレギュラーで上がることも多いものですが、売上までの過程をしっかり作れるということは、ほぼ全て本人の努力です。
まずは売上までの道筋をしっかりと立てられるような営業マンになってもらう、というのが方針です。この点は他の会社や業界とは異なるかもしれません。
属人性を廃止して、努力さえすれば大抵の人は成果をあげられる、という仕組み作りに重点をおいていました。
──本日はありがとうございました。長年、多くの会社の目指す姿として語られる理由がよく分かりました。
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