今回は外資系IT企業でカントリーマネージャーを担当されている営業管理者様から、匿名でお話を伺いました。
管理者様はIT企業で20年以上に渡って営業経験を積んでこられました。現在は日本法人のトップとして営業メンバーをマネジメントする立場です。
外資系ITで実践しているプロセスについて、インタビューをお届けします。
候補者様 自己紹介
──これまでの経緯を教えていただけますでしょうか?
営業歴はおおよそ20年以上といったところでしょうか。外資系IT企業でカントリーマネージャーの職務についております。
カントリーマネージャーは、外資系企業日本オフィスの代表者の位置づけです。日本支店の所長という見方をされることもありますが、実質的には営業のトップです。
──複数のIT系会社を渡り歩いて今に至るわけですね。
はい、そうです。
外資系IT企業の営業の流れ
──現在の営業の流れを伺ってもよろしいでしょうか?
リードを獲得し、営業が訪問やリモートを通じて提案、商談、最終的に受注につなげます。
以前は、リードの獲得も含めて全部営業が担当していましたが、今ではセールスの初期段階のアプローチをインサイドセールスの方にお願いするケースも増えてきました。
他にもリードの獲得に関しては、パートナーセールスの方を通じて、パートナー会社から紹介いただいたり、イベントを通じてリードの獲得を目指したりなど、アプローチはさまざまです。
その他、営業が自分のネットワークを生かしておこなう案件の掘り起こしなども有効なアプローチと考えています。
外資系IT企業の商談管理
──どのような商談管理をされていますか?
商談はフェーズを分けて管理しています。
いくつかの会社に勤めてきましたが、だいたいどこでも似たフェーズ管理をしていますね。どの会社でも共通認識になっているようなフォーマットがあり、5つか6つのフェーズで管理し、最後の段階でクローズします。
フェーズ1はリードから商談へ至る手前の段階で、案件の確度でいうと0%です。
フェーズ2ではお客さまの課題を認識済みの状態であり、確度でいうと25%。
フェーズ3では、こちらから何が提案できるのか、具体的に考えていく段階です。中には私達ではお客さまの課題を解決できないケースもあります。まずはそこを見極めなくてはいけません。確度でいうと50%になります。
フェーズ4はお客さまとの最終交渉です。お客さまの意思決定を促します。確度は75%です
フェーズ5は、競合他社を排除してお客さまと弊社との契約合意を進めている段階です。提案も出来ており、契約書の作成も済んであとはお客さまのサインを待っている段階です。確度は90%と捉えています。
フェーズ6で契約完了となります。
──ありがとうございます。全体の流れがよくわかりました。提案段階がフェーズ3と伺いましたが、すぐに提案するわけではないのですね
実は提案も色々パターンがありまして、必ずしもフェーズ3まで提案しないわけではありません。フェーズ3に至る前であっても、各々が判断して提案を進めます。
会社紹介としてテンプレートの提案資料をもとに話をするのは、初期段階でおこないます。
──効率を重視して、最初はテンプレートのような提案書を使いながら、あとは状況に応じて提案書をカスタマイズしていくイメージでしょうか?
そうですね、細かいカスタマイズが必要なソリューションであればお客さまへ提案する内容も自然と多くなると思います。基本的には共通のものを使いつつも柔軟に対応しています。
──フェーズごとに案件を管理しているとのことですが、管理は週次のミーティングなどがあるのでしょうか?
そうですね、フェーズごとの確度は会話の中身で変わってくるんですが、週次でいうと1on1とフォーキャスト会議を設定しています。
1on1は本来、案件の話をする場ではありませんが、今後のキャリアプランなどの話の中で、目先の案件の話をすることもあります。
その他、日本支店としてどういう方向性を目指すか、ということを話し合うチームミーティングも週次でおこなっています。
フェーズ管理を目的として行なうミーティングというよりは、全体の流れを確認するためのミーティングと言ったほうがよさそうです。
営業メンバーのフォロー
──フェーズの突破に苦労している部下がいる場合、上司としてはどのような指導をするのでしょうか?
Salesforceを使いながら、この項目を満たしていないと次のフェーズへ進めないと、システマチックに管理している会社さんも多いかと思いますが、そうではない運用方法もあります。弊社の場合は、フェーズの運用はあいまいです。
フェーズというよりは、成約に向けて抑えるべきポイントをどの程度抑えられているか、の確認に重きをおいています。
フェーズに関係なく、どの程度ヒアリングできているのか、いつ頃までに契約の目処がたちそうかのか、などその時の状況と進捗具合を細かく確認しています。
もしうまく出来ていない場合は、どうやって改善していくか?という内容で話し合いの場を設ける感じです。
──フェーズだけにとらわれずに案件単位でやるべきことができているのか?という点が大事、ということですね。
本来はフェーズごとにうまく案件を進めていくのがよいのでしょうが、実務としては最短で契約を取るために動くという感じです。フェーズの考えは後付ですね。
重視しているKPI
──有難うございます。次の話題にうつりたいのですが、ご自身が営業活動を進めるにあたって大事にされているKPIなどあれば教えていただけますか?
まずはリードの数ですね。リードの数がある程度なければ話になりません。案件がたくさんあればいいのですが、案件にするにはリードがないとできません。
案件が枯渇してくればどうやってリードを獲得するのか、ここが全てです。
例えばあるイベントに協賛でお金をだして、リードを100件獲得したとします。そのうち、メールや電話で全てにコンタクトできるわけではないんですよね。
もし質の良いリードが獲得できなかった場合は、そもそも協賛すべきイベントであったのか、ウェビナーで伝えたメッセージは適切だったのか、という点も検証する必要があります。
案件に繋がらない理由と分析にも重点をおいています。営業個人の力量に依存するよりは、案件につながりやすいリードの獲得のほうが大事です。
そういう意味で、まずはリードの数が大事だと考えています。
──セミナーの開催において、獲得できたリードの分析もしっかりやる、ということですね。リードの数が少ない場合は、なぜリードが取れないのか、細かく分析して、リカバリーしていくということでしょうか?
そうですね、高い目標を設定している以上は案件を作り続ける必要があります。競争によって平均受注単価が下がってくれば、その分だけ案件の数でカバーしなければいけません。
常に案件が不足しがちな状況に陥りやすいため、結果としてリードの数、ということになります。
1件大きな案件が決まればいいのですが、狙ってできるものではありませんしね。
新人をどのように育てるのか
──中途の営業社員が参加した時に、どのような流れで育成が進むものでしょうか?
まずは研修です。基本的な研修の流れは会社として決まっていますので、その流れで進めます。オンライン研修としてコンテンツがまとまっていますのでそれを受けてもらいます。
その後は日本の営業フローに慣れてもらいつつ、1on1やフォーキャストミーティングに参加してもらう流れです。
きっちりしているわけではなく、日々の業務の中で慣れてもらいながら信頼関係も構築していく感じです。
──言葉として説明はするものの、細かいところは運用の中で慣れてもらう、という流れでしょうか?
そうですね。最初からガチガチに進めるのは難しいだろうなという思いがありますので。
──フェーズという考えはありつつも、実務に合わせて柔軟に運用する大切さを理解できました!本日は貴重なお話を有難うございました。
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