売りづらいサービスを”売りやすく”する。実例を踏まえた考え方

”売りやすいサービス”とは、どのようなサービスでしょうか。

さまざまな考え方がありますが、私は「サービスを提供する前に、そのサービスから得られる利益を確定できるもの」が売りやすいサービスだと考えています。

利益確定できるサービスは売りやすい

ここでいう“利益の確定”とは、たとえば蛍光灯からLEDライトへ変更した際に、電気代の削減効果が確実に得られるようなケースを指します。

つまり、サービス導入による売上向上やコスト削減により、利益が確定できる状態のことです。

一方でコンサルティングのようなサービスは、サービス提供前の段階で顧客の利益を明確化することが困難なため、売りにくいサービスと言えるでしょう。

営業活動は契約前に「サービスが生み出す利益の実現」を理解し納得してもらう必要があるため、サービスを提供するまで実際の利益が曖昧なサービスは、一般的に営業難易度が高いといえます。

無名の会社が「営業コンサルティングで御社の営業力をアップします」と提案しても、事前情報を持たない第三者から信頼を得るのは容易ではありません。

今回はこのような難易度の高いサービスを、いかに「利益を確定できるサービス」として販売するかについて解説します。

システム開発を「利益確定できるサービス」として提供する例

私自身を例に説明すると、私はシステム開発を事業の一つとして行っており、海外のSier(システムインテグレーター)における日本国内のプロジェクトを支援しています。

通常、海外のSIerは海外現地の顧客を対応していますが、国外の拠点として日本法人のシステム開発を依頼される場合があります。

しかし、海外Sierにとっては日本語という高い参入障壁があり、顧客対応を伴うシステム開発は、日本語ネイティブのスタッフがいなければ対応困難です。

自社で対応できない場合、こういった案件は日本国内のパートナーに丸ごと外注することになりますが、その場合は大きな利益を得ることは難しくなります。

そこで私は、海外Sierが日本国内のプロジェクトを受注した際、海外のメンバーに代わって要件定義を日本語で行い、その内容を海外のエンジニアへ連携する役割を担っています。

つまり、従来であれば日本のSierに丸投げしていた案件について、私が日本法人の要件定義を担うことで、内製化できた部分の利益を確定しているというわけです。

私は海外Sierや営業パートナーに対して、「英語で海外エンジニアのマネジメントが可能である点、要件定義に強みがある点」を伝えることで、このようなプロジェクト支援の機会を得ています。

利益を確定するサービスとして提供するコツ

直接的に利益を確定しないサービスを、サービスの提供前に「利益が確定するもの」として提案するには、サービスではなく顧客のビジネスを中心に考える必要があります。

1. 顧客のコアビジネスにサービスを埋め込む

顧客のビジネスモデルの中で、自社のサービスがどのような位置付けであれば顧客の利益を確定できるのか、自社のサービスを顧客ビジネス全体の一部として考えることが重要です。

多くの場合、顧客のコアのビジネスの一部として自社のサービスを提供できると、顧客の利益に与える影響を大きくできます。

例えばメーカーの製品に組み込まれる部品はこれに該当し、部品コスト削減は顧客が得られる利益に繋がります。

自社のサービスがそのような顧客製品の部品でなかったとしても、類似の状況を顧客のビジネスモデルから作り出すのです。

私の例では要件定義支援というサービスを、海外Sierの日本現地プロジェクトの内製化支援として、彼らのビジネスに組み込んで提供しています。

2. 異なるセグメントへの販売を試みる

もし既存顧客のビジネスから新しいアイデアが出ない場合は、異なるセグメントへの進出を通して、アイデアの探索を進めることが有効です。

異なる業種・地域・企業規模では、その先の顧客や周辺環境も変化するため、サービスの販売先のビジネスモデルが同じであっても、新しいアイデアを得ることができます。

私自身も複数のプロジェクトを支援する中で、あえて異なる顧客セグメントへの進出を試みた結果、海外Sierの持つ”日本語×英語×システム開発”に対応した人材ニーズに気づくことができました。

”売りづらいものを売る”とはビジネスを考えること

サービスを売りづらいのは提供前に利益を確定できないからであり、利益を確定できないのは、サービスを顧客のコアのビジネスへ組み込む工夫が足りていないからです。

売りづらいものを売るときは、顧客ビジネスの理解を深めましょう。

この視点こそが、難易度の高いサービスを販売する突破口になります。