BtoB企業におけるMA(マーケティングオートメーション)ツールの定着には、段階的な進め方が必要です。
自社のマーケティングスキルや受容度を考慮せず、一気に全てを実現しようとすると、得られる効果よりも先に、他部門とのトラブルが発生するリスクがあります。
導入初期、営業部門は名刺情報など「自分が汗をかいて集めてきた資産」をMAに受け渡す不安を抱きます。
雑なコミュニケーションが顧客の信頼を損なうのではないか、という懸念が生まれやすいためです。
たとえば、商談中の顧客に対し、類似サービスの紹介メールが自動的に配信されてしまうと、商談が予期せぬ方向へ進む場合もあります。
そこで今回は、MAツールを組織に定着させるためのステップについてご紹介します。
MA定着は大きく3ステップに分かれます
- MAツールの存在を認めてもらう段階
- MA起点の施策で成果を出す段階
- スコアリングを活用して優先順位をつける段階
①周囲に存在を認めてもらう段階
MA導入初期はまず、「MAが害になるものではない」と理解してもらうことが重要であり、この段階では、トラブル防止の仕組み作りに注力します。
- 配信対象外顧客をSFAでフラグ管理できるようにする
- 商談更新があった顧客には配信しない設定にする
など、他部門が納得できる形でMA運用をコントロールする必要があります。
また、この段階で行う施策は、営業部門がすでに行っている業務の代行が受け入れられやすいです。

例:
- 営業が担当していたセミナー集客
- 営業が行っていた告知メール
既存業務の負荷軽減につながるため、MAが歓迎されやすくなります。
②MA起点で問い合わせを生み出す段階
MAが現場に馴染んだら、MA起点で新しい施策を始める段階に入ります。

例:
- メールマガジン配信
- コンテンツ獲得施策
- 新規リードの育成施策
この段階では、マーケティング発の施策で問い合わせを生み出し、MA施策自体の価値を高めていきます。
③スコアリングで対応優先度をつける段階
MAから安定的に問い合わせが発生するようになると、次は対応リソースの限界という課題に直面します。
例えば、
- 資料ダウンロードだけの顧客
- 温度感が低い顧客
こうした相手まで一律に対応するのは非効率です。
そこでスコアリングを活用し、対応優先度を明確にします。

潤沢な問い合わせがない段階でスコアリングを導入すると、無理やりホットリードを作ることにつながり、営業とトラブルを起こしやすいため、おすすめしません。(以下参考)
自社の定着段階を見極めることが重要です
MAツールは非常に有効なツールですが、組織のスキルや受容度を踏まえて段階的に高度化していかなければ、ツール自体が信用される前に排除されしまいます。
とくに、
- 信頼を得られていないのにMA施策を連発する
- 問い合わせが少ないのにホットリードを強引に作る
こうした失敗は非常に多く見られます。
ぜひ自社の定着ステージを理解し、段階的な高度化を目指していただければと思います。

ソフトバンクに新卒入社後、法人向けセールスとしてキャリアをスタート。その後は法人マーケティングチームの立ち上げに携わり、ユーザーとしてSalesforceの活用を経験。以降、アビームおよびPwCにてSalesforceを中心としたCRM領域のDXプロジェクトに参画。構想策定から要件定義、開発、実装まで、幅広いフェーズでシステム導入プロジェクトに従事
