SFAをはじめとするSaaSツールは、ローコード開発に対応しており、本格的なプログラミングを行わなくても、設定変更を中心に一定の機能開発が可能です。
そのため、「SaaSはローコードだから導入が簡単になる」と捉えられることも少なくありませんが、実際には、SaaSだからといってシステム導入そのものが容易になるわけではありません。
SaaSが最も力を発揮するのは、開発工程ではなく、要件定義フェーズであり、むしろ開発前の段階にこそSaaSの価値があります。
本記事では、SaaS開発をプロジェクト全体の視点から捉え、今回は要件定義におけるメリットについて解説します。
システム開発におけるコーディング作業は全体の2割程度
一般的な業務システム開発において、コーディングや設定といった「開発作業」が占める割合は、プロジェクト全体の約2割程度に過ぎません。
残りの多くは、要件定義、設計、テスト、調整といった工程に時間が費やされます。
つまり、プロジェクト期間中ずっと開発作業をしているわけではありません。
仮に、この2割にあたる開発作業が、ローコード開発によって20%効率化されたとしても、プロジェクト全体で見れば影響は5%程度にとどまります。
そのため、「SaaSを使えば開発が早くなる」という期待は、プロジェクト全体の観点ではあまり意味を持ちません。
SaaSは要件定義の段階でデモを見せられる
SaaS開発において本当に期待すべき点は、要件定義の段階で最終的なアウトプットイメージをデモとして提示できることです。
SFAなどのSaaSでは、仮にデータモデルを定義するだけでも、以下のような基本機能が標準で利用できます。
- データ表示画面
- 作成・閲覧・編集・削除(CRUD)機能
- データ一覧画面
これらは「データを登録・管理する」という観点において、最低限必要な機能です。
要件定義で検討すべき機能は、多くの場合、これらの標準機能にどのような改善要素を追加するかという+αの部分になります。
また、詳細なロジックを一旦無視し、表面上の動作だけを簡易的に作成できる点もSaaSの強みです。
たとえば、本来は複雑な計算ロジックが必要な箇所であっても、仮の数値を表示することで、システムの動作イメージを先に共有できます。
こうした仮データによる画面や動作を要件定義の段階で提示することで、ステークホルダーは完成形に近いイメージを確認しながら要件定義を進めることが可能になります。
要件定義の品質向上による手戻りの削減
要件定義の品質が向上することは、そのまま設計・開発以降の手戻り削減につながります。
開発段階で要件の認識ズレが発覚したり、テスト工程で大きな修正が必要になると、手戻りのコストは一気に膨らみます。
一方で、要件定義の段階で最終アウトプットのイメージを、実物に近い形ですり合わせておけば、こうしたリスクを大きく低減できます。
SaaS導入に関わる場合は、要件定義フェーズで簡易的なデモを活用することを前提に進めることを検討しましょう。

ソフトバンクに新卒入社後、法人向けセールスとしてキャリアをスタート。その後は法人マーケティングチームの立ち上げに携わり、ユーザーとしてSalesforceの活用を経験。以降、アビームおよびPwCにてSalesforceを中心としたCRM領域のDXプロジェクトに参画。構想策定から要件定義、開発、実装まで、幅広いフェーズでシステム導入プロジェクトに従事
