事業のコンサルティング依存。経営者の仕事とは何か

コンサルティングという市場は、戦略や経営からITに至るまで多岐にわたり、多くの業界でコンサルティング事業者がクライアントに価値を提供しています。
実際、専門性や客観性が求められる場面において、コンサルティングの存在は非常に重要です。

一方で、大手企業を中心に、外部のコンサルティングに過度に依存することを危惧する声があるのも事実です。

今回は私自身の視点から、コンサルティングに過度に依存することの問題点について整理してみたいと思います。

コンサルティングが提供しているのは「プロセス」

まず前提として、コンサルティングが本質的に提供しているものは「プロセス」だと私は考えています。

ビジネスには無数の選択肢が存在します。その中から何を選ぶべきかを、客観的な情報やロジックに基づいて整理し、「合理的だと考えられる選択肢」を提示し、意思決定を支援する。
これがコンサルティングの役割です。

ここで重要なのは、「客観的に見て正しい」ということと、「実際に将来において正しい」ということは必ずしも一致しない、という点です。

つまり、コンサルティングは後者を保証するものではありません。

例えば、1990年代に大手戦略コンサルティング会社が行った市場予測の中には、現在の視点から見ると結果的に外れているものも存在します。

「携帯電話は2000年代には個人に普及しない」といった調査結果が示されていたケースもその一例です。

では、それらの分析は無価値だったのでしょうか。
決してそうではありません。当時入手可能だった情報を前提にすれば、「合理的に考えるとそう判断せざるを得ない」というプロセスを提供しており、その時点での意思決定には確実に貢献しています。

合理的に正しいことが、最高の意思決定とは限らない

ただし、合理的であることが必ずしも100%正しい答えになるわけではありません。

コンサルティングを活用すれば、必ず正解にたどり着けると考えるのは危険です。

また、合理性を積み上げるだけでは、競合と大きく差別化した意思決定を行うことは難しくなります。

情報とロジックを重ねていけば、誰しもが似たような結論に近づいていくからです。

ロジックの積み上げだけで意思決定を行うと、結果として競合と同じ判断を下しやすくなり、差別化が困難になります。

差別化とは、競合が「選ばなかった」あるいは「選べなかった」選択肢を取ることの裏返しです。

合理的に考えた結果、「選ぶべきではない」と判断される選択肢は、世の中に数多く存在します。

その中で、あえてその選択肢を選ぶのかどうか、ロジックでは補いきれないリスクや不確実性も含めて意思決定することで、初めて競合との差別化が生まれます。

100%合理的であることを目指すのではなく、残りの部分をビジネス上の決断力で埋めていくことが求められます。

合理的な判断で対応する領域を見極める

以上を踏まえると、経営者の究極の仕事は「決断」であると言えます。

そのうえで、コンサルティングを活用すべき領域は、合理的な意思決定で十分対応できる部分であり、自社のコアな差別化要素ではない領域に限定するのが、適切なバランスだと考えます。

経営そのものをどうすべきか、意思決定自体を外部に委ねてしまうのは、やや行き過ぎた依存と言えるでしょう。

決断そのものをコンサルティングに委ねてしまうと、導き出される結論はあくまで「合理的な選択肢」に留まります。

結果として、他社が決して選ばないような決断の領域に踏み込むことが難しくなります。

コンサルティングを活用する際には、自社がビジネス上の「決断」までアウトソースしようとしていないか、一度立ち止まって考えることが重要です。