今回は医療系ITベンチャーでゼロからのプロセス管理を経験した営業管理者様から、匿名でお話を伺いました。
管理者様は僅か1年という短期でありながら、管理者として営業プロセスの確立されました。
ゼロからの立ち上げで有効に機能したプロセスについて、インタビューをお届けします。
候補者様 自己紹介
──入社されてからこれまでの経緯を教えていただけますでしょうか
私は、医療業界に特化したITサービスを提供しているベンチャーで、プレイングマネージャー的な立ち位置にいます。
実は今いる会社は、私がもともと在籍していた会社が買収し、グループ化したという経緯があり、私が管理職として出向して今の営業プロセスを浸透させました。
複数の部署の責任者、マネージャーなどを兼任しており、営業業務にも携わるようになって1年と少しになります。
医療ITベンチャーの営業の流れ
──営業メンバーの方はどのような仕事をされるのでしょうか。
まずマーケティングを担っている部署が、リード(見込み客)を創出してきます。そしてインサイドセールスを担当する部署が、商談を獲得してきてはじめて私たちの出番となり営業プロセスが動き始めます。
初回は、オンラインで商談を行い、お客様の反応がよく、私たち会社の商材がお役に立てそうだと確信したら、あとは4カ月から半年ほどかけて幾度となく実際に訪問していきます。
そこからじっくりと信頼関係を構築しつつ、丁寧にお客様と話し合い、合意できれば、そこから受注という感じです。
カンタンに説明しましたが、やはりビジネスの世界はそう甘くはないもので受注への道のりは長いです。
医療ITベンチャーの営業マネジメント
──どのような商談の管理をされていましたか?
お客様の反応などから受注確度をランク別にABCDと分けて可視化し、この先の商談を有利に持って行くための提案内容や、施策を部下と一緒に考えていきます。
もちろんはじめのうちは、即決いただくケースを除き、お互いにですけど相手の出方を慎重に見極めていく段階ですので、だいたいすべてのお客様が確度Dからスタートします。
これまでの経験上、訪問後「この商談はうまくいきそう」と手ごたえ的なものを感じても、それは絶対ではなくわからないものと心得ています。
お客様の反応がよさげであればD⁺と記したりしますが、さすがに最初から確度までは正しく読めないものです。
そこから、丁寧にヒアリングを重ねていくうちに予算、時期、価格などの全容が見え、ある程度お客様を知ることができれば、会社の基準に沿って受注確度がC→B→Aと上がっていく感じです。
予算と決裁者のつかみ具合、機能がマッチしているか、価格がマッチしているか、導入時期が明確かっていうところで会社は判定していきますので、商談でこれらが判明した瞬間に確度が高まります。
具体的には、〇△をつけてチェックしていきます。項目の〇が2つになったら受注確度はひとつ上がり、3つになったらもうひとつ上がる感じです。
──受注確度を判定するポイントはどのようなものでしょうか?
いろいろな判断材料がありますが、いちばんは予算と導入時期です。これらが明確になっていないと割と話を前に進めていきづらい商材ですので、そこはきちんとヒアリングで正確に把握していけるように率先して自ら実施、指導もしています。
また、お客様の発注・業者選定基準みたいなものも私たちがどことなく聞き出して把握し、それを踏まえてプレゼンでは価格優位性や機能優位性を恣意的に操作し、有利にクロージングできるように持って行けたら理想的と思っています。
ただ実際は、あまりそこにとらわれすぎることなく動いてはいます。
どういうことかと言えば基本、先ほどお伝えした軸や予算が優先ですが、それがわからなくてもとりあえず進めていい案件(要は「なんかいい雰囲気がする」と勘づいた案件)は結構あったりするのです。
たとえば、すべて△などの案件など、△は不明という状態で決して〇とは言い切れないのですが、そういうお客様に対しては試しに「この価格で」とエイヤッ!と投げてみて「当たるも八卦、外れるも八卦」のような感じで動くのも個人的にはわるくないと思っています(笑)。
なかなか前に進まない案件については、こういう変化球的な戦略をとると、いい結果につながるときもあったりするのです。
このような変化球を投げるためには、日頃から部下と信頼関係を構築し、動向を把握し、管理しないと難しいです。部下の管理には日報が大いに役立っています。
部下たちには「その日に起きたこと」を書いてもらうようにしています。また確度判定でランクが上位になっている案件に関しては「25日にプッシュします」みたいなネクストアクションや、ゲームプランも必ず書くように指導しています。
私は訪問件数、アクション指標といったものは、あまり評価対象とはしていません。その代わり売上金額×受注確度として見込みを出して可視化し、そこを個人的には重要視しています。
この数値は実に都合がよく、予算がショートしそうな場合の対策も立てやすかったりします。
私は、半年先から1年先までの売り上げ見込みを常に出していて「予算がショートしそうだな」と、なんとなく事前に察知できるようになりました。
ショート予測を踏まえ、目標を下方修正するよりも、必達のためにどうすればいいかを先に考えます。
例えば軽めの商材にリソースをシフトして積み上げていくほか、大型案件があれば確実に取りに行けるよう最優先で動いていくように部下たちに指示して対策を講じていきます。
営業メンバーのフォロー
──うまくいかないメンバーをどのようにフォローしているのでしょうか?
営業プロセスを序盤、中盤、終盤で分けて、直属の部下たちを評価していくと
・中盤・終盤は力を存分に発揮してくれているのに序盤が圧倒的に弱い
・中盤になった途端パフォーマンスがわるくなる(何をすべきかがわかっていない)
など、みなそれぞれ克服すべき課題があり、基本は彼らが気づくまで見守り、見かねたときにだけ声かけしようと決めています。
確度を過少申告するメンバーの対策
──今のマネジメント体制が確立するまでどのような苦労がありましたか?
この管理手法を導入した当初は、受注確度が上がると見込み値として具体的な数字が反映されるため、部下は「期待されている」と気負うことになりました。
そのためうまく進まなくなったとき「自分の責任」「責められるのがコワい」と思い込み、結果、確度を上げず責任やリスクを回避しようとする風潮が一時期高まりました。
対策として、契約後の導入エンジニアは確度の高い案件を事前に申告した営業の早い者勝ちにしました。「契約できそう」と早期申告してくれた案件に対しては、優秀なエンジニアをアサインします。その後は、過少申告にも一定の効果があったと感じます。
──営業の世界は飴と鞭だと、鞭になりやすいので、素晴らしい試みかと思います!本日は貴重なお話を有難うございました。
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