今回は私がこれまで関わってきたプロジェクトの経験を踏まえ、CRM領域における生成AIチャット導入について解説したいと思います。
ここでは技術的な仕組みよりも、「ビジネスにどのように貢献できるか」という観点から整理します。
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生成AIチャットの活用領域
まず、CRMにおいて生成AIチャットがどのような用途で活用できるのか、その全体像を整理します。
大きく分けると、生成AIチャットがCRMに適用できるのは次の4つのパターンです。
1. 知識提供型
“知識提供型”は生成AIが学習したワードに対して直接質問し、学習内容に基づいた回答を得るパターンです。
たとえば、学習させた商品のカタログ情報から「この商品はいくらですか?」と質問した際に、「1万円です」と即座に答えを得られるイメージが該当します。
既存のチャットボットのように定型文を個別に用意する必要がなく、商品カタログなどの情報源から適切な内容を抽出して回答できます。
2. 判断提供型
“判断提供型”は学習済みのルールに基づいて、与えられた状況に対する判断を提供するパターンです。
たとえば、「AかつBの場合は保険が適用されますか?」という質問に対して、「はい、適用されます」と回答するようなケースです。
従来のチャットボットでは、顧客の状況を特定するまでに質問を繰り返す必要がありましたが、生成AIは入力内容から質問者の背景をまとめて把握し、最適な回答を提示できます。
3. システム処理連携型
“システム処理連携型”は生成AIチャットを通じて、CRMシステムや他の業務システムの処理を呼び出すパターンです。
たとえば、「電話で連絡をください」というメッセージを受けた際に、有人スタッフへの対応チケットを自動的に起票する、といった連携などが考えられます。
生成AIは呼び出すべきシステム処理の判定も行うことができるため、事前に処理を定義すれば既存のシステムと連携しても安全に許可した範囲で処理を実行可能です。
4. CRMデータ連携型
“CRMデータ連携型”は内部の顧客データと連携し、高度にパーソナライズされた対応を行うパターンです。
たとえば、「私の車はAかつBの場合に保険が適用されますか?」という質問に対して、「はい、適用されます」と顧客固有の情報を踏まえて回答できます。
顧客データを活用することで、より一人ひとりに最適化された回答を提供します。
背景理解こそが生成AIの価値
生成AIチャットの注目すべき特徴は、生成AIがユーザーの入力内容から”背景を理解できること”です。
従来のチャットボットはユーザーの状況把握の際に内容を分岐質問で整理する必要があり、すべてのパターンを網羅しようとすると膨大な設定が必要でした。
また、質問者が複数回のやりとりを繰り返さないと回答にたどり着けないこともあり、ストレスの溜まるコミュニケーションになりがちです。
一方、生成AIは文脈から入力者の意図を汲み取れるため、一度の入力でも相手の背景を把握し、適切な回答を返すことができます。

背景理解が判断提供型で真価を発揮
特に、ルールに基づく回答を提示する「判断提供型」のパターンでは、生成AIによる背景の理解力が発揮されます。
複雑な判断ほど文脈や意図の解釈が重要ですが、生成AIであればユーザーの入力内容から背景を的確に理解し、情報が不足している場合は、最小限の質問により理解に達します。
つまり、背景理解に必要な分岐パターンの設計ではなく、回答に必要なルール整備に注力すれば対応品質を向上できるため、構築後は現場主導で学習データの追加と更新により制限のない改善サイクルを実現できます。
新しい価値を見極める視点
今回は生成AIの価値を”背景理解”だと説明しました。
新しい技術を導入する際は、既存の仕組みでは実現できなかった価値をどこに見出すかが重要です。
生成AIチャットボットを単に”人のように会話できるツール”として捉えてしまうと、知識提供型の仕組みに留まってしまう場合もあります。
ツールの特性を踏まえた上で、新しい価値からソリューションを検討してください。

ソフトバンクに新卒入社後、法人向けセールスとしてキャリアをスタート。その後は法人マーケティングチームの立ち上げに携わり、ユーザーとしてSalesforceの活用を経験。以降、アビームおよびPwCにてSalesforceを中心としたCRM領域のDXプロジェクトに参画。構想策定から要件定義、開発、実装まで、幅広いフェーズでシステム導入プロジェクトに従事
