世の中には、エクセレントカンパニーと呼ばれる、優れたノウハウを持つ企業が存在します。
営業やマーケティングの分野においても、いわゆる「元○○社」という肩書きは、人材市場で高く評価されることが多いでしょう。
では、そうした人材を採用し、同じ方法論を自社にインストールしようとした場合、果たしてうまくいくのでしょうか。
結論から言えば、多くの場合、それは一筋縄ではいきません。
今回は、方法論そのものではなく、その方法論を支えている「文化」に焦点を当てて解説したいと思います。
文化的に成立させるための土台が必要
優れた方法論ほど、その浸透には前提となる文化が存在します。
方法論が強力であればあるほど、組織全体に理解と定着を促すための努力が必要になります。
組織が拡大するにつれ、全員に同じ水準の努力を求めることは簡単ではなく、その努力を支える文化がなければ、なおさら困難になるでしょう。
多くの人が同じ方向を向き、同じ基準で努力し続けることは、それだけ難易度の高い取り組みなのです。
ここで、私が個人的に知る大手精密計測機器メーカーのK社の事例を紹介します。
大手K社は入社後2年間は「方法論の徹底」のみを評価
K社は、営業力の強い企業として広く知られています。
その営業手法を聞くと、分単位で管理されたスケジュールや、徹底したロールプレイングなど、一見すると「当たり前」に思える要素を、驚くほど高い水準で実行しています。
K社の優れた営業方法論そのものは、調べればいくらでも情報として見つかるでしょう。
しかし、ここで注目すべきなのは、「なぜこの方法論がここまで浸透しているのか」という点です。
実はK社では、入社してから数年間、営業成績そのものはほとんど評価対象になりません。
評価されるのは、方法論をどれだけ忠実に実践しているか、その徹底度合いだけです。
つまり、自社の方法論を無視して受注を取った営業よりも、方法論を徹底した結果、成果が出なかった営業の方が、入社後数年という短期間では高く評価されるのです。
新卒から長期雇用を前提として人材を育成する覚悟がなければ、「成果を出すため」ではなく、「方法論を理解・習得させるため」だけに学習期間を設けるという意思決定はできないでしょう。
こうした「方法論の習得を絶対視する文化」があるからこそ、徹底した指導のもとで、驚異的なレベルまで営業方法論を体得し、実践できるようになっているのです。
実は、K社の本当の強みは方法論そのものではなく、方法論の習得を何よりも重視する、その文化にこそ本質があります。
方法論を支える文化にも注目
今後も、書店やメディアでさまざまな営業・マーケティングの方法論に触れる機会があるでしょう。
そうした情報に接する際には、方法論そのものだけでなく、「なぜその方法論が成立しているのか」「どのような文化がそれを支えているのか」を考えてみてください。
それこそが、企業にとっての究極的な差別化であり、方法論を実現するための本当の鍵である場合も少なくありません。

ソフトバンクに新卒入社後、法人向けセールスとしてキャリアをスタート。その後は法人マーケティングチームの立ち上げに携わり、ユーザーとしてSalesforceの活用を経験。以降、アビームおよびPwCにてSalesforceを中心としたCRM領域のDXプロジェクトに参画。構想策定から要件定義、開発、実装まで、幅広いフェーズでシステム導入プロジェクトに従事
